2歳児の情景
・ドレス・
白くてふんわり。
レースもほんの少し。
なんてことのない部屋着のスカートだけど(ウエストもゴム!)
娘にとってみれば それは‘ドレス’ということらしい。
しげしげ眺めて、ゆっくり触り
そして ためらいがちに聞く。
「ママのドレス、わたしも大きくなったら着れるかなあ?」
・大人だから・
スーパーでは、使用後のカートが放りだされたまま通路を塞ぐ。
テレビでは、誰が悪い、彼が悪いと詮索と中傷。
ママときたら、「おやつはそこまでよ!」なんて言いつつ
自分はもうひとつこっそりチョコレートをつまんでいる。
人が困ることはしちゃだめだよね。
言われて嫌なことは 言わない方がいいよね。
お菓子を食べ過ぎたら 虫歯になるよ。
大人の言うべきことだけど
ああ、恥ずかしい。大人だってできていないことだらけだ!
言う資格ないかもね。
説得力なんてちっともないのかもしれないね。
でも、やっぱり言わなくちゃいけない。
私は大人だから言わなくちゃいけない。
大人達はきちんとそれを子供に伝えなくてはならない。
‘人の迷惑になることはしたらいけない。
言われて嫌なことは、言わない。
甘いものは ほどほどに。’
・悔しいけれど・
とうとうやってきた。
この時期の大変さからして、
世には‘魔の2歳児'なる言い方もあるほどなのだ。
とうとう、それがやってきた。
口を開けば イヤ!ダメ!
公園に行っても「お友達とは遊ばない」
家に戻れば「パパは好きだけど、ママはきらい」
かと思えば、「抱っこ、抱っこ」
一転、「わたしはおねえちゃんだから、一人で住んでるの。
ママあっちいって」
日も暮れる頃、ママダウン。
ぐでんと横になり ただただ空(くう)を見つめる。
「ママっ」
答える気力は ありませぬ。
「マーマっ」
はあ・・・静寂求む。
「マアマっ!」
「なあに?」
仕方なく、答える。気力体力振り絞って。
「ママ、何見てるの?」
ふふふ、聞いたって分からないだろうから
一応 ありのままを答えよう。
ふふふ、黙って退散してゆくだろう。
「空 みてただけ」
しばしの静寂。
「それって、新しいくう?古いくう?」
負けた・・・
・いいことだけ・
一年前のこの状態、克服しました.
本当に惹かれているのか、
これを避けて幼児生活を送ることは不可能と悟ったか、
とにもかくにも、もう泣きません。
それどころか、図書館に行くと必ずアンパンマンシリーズが一冊。
返却日前日には、はい、このありさま。
何度も、何度も見てるのね。
じっくり、じっくり見てるのね。
玉露も、鉄火巻きも これで覚えたのね。
好きなものがあるって、嬉しいことだもんね。
「ドキドキするってどういうこと?」って聞いてきたけれど
多分、今の気持ちがドキドキだと思うよ。
私はね、本当はちょっとこわかったの。
そう、情けないけれど
私こそ このイラストがちょっぴり苦手で
子供達がどうしてこんなにアンパンマンが好きなのか聞いてみたいくらいだった。
でも、今は 結構かわいいよって思う。
一生懸命見ている君を通してみた、アンパンマンは
結構 いいよ。かわいいよ。
新しい歌もいくつか覚えて 実はちょっぴり感激してる。
♪もし自信をなくして、くじけそうになったら
いいことだけ、いいことだけ 思い出せ♪
すぐにめげちゃうママだからね。
それ以降、何かあったら心の中で歌ってる
♪いいことだけ、いいことだけ思い出せ♪
・お守り・
さて家を出ようと鍵を取り出したとき、
手入れしていない爪が目に入ると 落ち込む。
バッグを探り
ハンカチを忘れたことに気が付くと ちょっと心許ない。
なにはなくとも、清潔な爪と、きれいなハンカチ。
私にとっては、とても大切。
これが保てていないとなんだか不安。
爪の手入れといったって、
マニュキュアを塗るわけでなし、ネイルアートを施すでなし、
ただ 短く切りそろえるだけ。
きれいなハンカチといったって、
ブランドものでなし、おろしたてでなし、
ただ 洗いたてというだけ。
けれどもそれらが保てていたら、訳もなく安心してしまう、
いはば お守りみたいなもの。
だから、いつも丁寧にアイロンをあてて
あなたのバッグにもしのばせる。
実際に二歳のあなたがハンカチで手をふく機会など
そう多くはない。
でも、お守りだから。
私はいつも、その小さなハンカチにも
念入りにアイロンをあてる。
爪は、器用なパパに切ってもらう。
あなたの指先がいつも清潔でありますよう。
清潔な爪と、洗いたてのハンカチ。
なにはなくとも、それがあれば安心だという気がする。
・鏡・
正さなきゃ、と強く思う。
こんな言葉、こんな表現、こんなふるまい。
子供を見ていると、自分を見ているようだ、とふと思う。
子供を育てることは
自分を育てることなのかもしれない。
正さなきゃ。
(2004. 6.4)
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