冬時間
「さよなら ROVER」
長い間、家族の足として頑張ってくれた
我が家の愛車、ROVER 200.
あちこちにガタがきて
一筋縄ではいかないところが
まるで頑固者のおばあさんみたい。
愛称は、「老婆さん」でした。
不具合は日常茶飯事で
止まる、液漏れする、
操作通りスムーズに動かない・・・・
朝の交差点、
青信号で「さあ!」とアクセルを踏むも
うんともすんとも動かない。
幸いにして後続車がパトカーで
前方にはすぐ交番、なんて
喜劇みたいな展開に助けられたこともあったっけ。
冷や汗をかきながら、
お巡りさんと一緒によいしょ、よいしょと車を押し
交番でうなだれてレッカー車を待ったこと。
エアコンのほとんど効かない修行みたいな夏のドライブや
テープしか聞けないカーステレオなど
とほほ・・・な思い出は数知れません。
それでも、修理やため息を重ねながら
(悪態ついたり、叱咤激励を飛ばしつつ!)
最後までこの車に乗りたかったのは
やはり何より、‘老婆さん’が好きだったから。
落ち着いた深緑、
流行など どこ吹く風の
普遍的なボディラインの美しさ。
決して目立つ車ではなかったけれど
駐車場で待っている‘老婆さん’が目にはいると
訳もなく嬉しくなったものです。
また、個性と品性を備えた
これみよがしでないお洒落具合は
さすが おばあさん。
先輩の女性として!?見習うべき箇所でもありました。
さよならは突然に。
冬の終わり、不具合を感じて
すっかり馴染みとなった修理屋さんに行くと
突然の余命宣告。
そろそろかな、と思いながらも
どこかで まだまだ・・・なんて楽観視していただけに
そのショックは大きいものでした。
と同時に、しかるべき時だ、という思いもありました。
もう、お疲れさまを言ってあげてもいい時なのだ、と。
あちこちに不調を抱えながらも
安全だけは守って
ここまで頑張ってくれた‘老婆さん’。
思い残すことなく、さよならできる所まで
一緒に走ってくれてどうもありがとう。
今こそ、気持ちよくお別れをするべき時なのだ、と。
こうして、私達と‘老婆さん’との別れが日がやってきましたが
それは寂しくも、
どこか清々しいものでもありました。
沢山の思い出を乗せて
あの道、この町、一緒に走ってきたね。
‘老婆さん’の身勝手ぶりに、私はいつも悩まされていたけれど
運転下手な私に、きっと‘老婆さん’も参っていたに違いないね。
本当にありがとう。
そして、さようなら。
大好きだった‘老婆さん!’
*
もうお別れという最後の最後まで
‘老婆さん’のイラストを描いていた娘。
せつなくて
車内で描いた最後の一枚を
ダイアリに 貼りました。
*
在りし日の‘老婆さん’は
「British Racing Green」のページにも。
(2007.5.30)