冬時間
夏の調べ
■名前で選ぶ器■
「浜辺の調べ」
そんな名前がついていたこの信楽の器は
波が寄せては返す、静かな波打ち際をイメージして
作られたものなのだそう。
細かな貫入と、
すうっと伸びたグレイの模様が涼やかです。
盛鉢が欲しい、と長いこと探してはいましたが
白状してしまえば
購入の決め手となったのは、
やはりこの名前といえるかもしれません。
浜辺、そして、調べ、
私の中ではどちらも大切にしたいキーワードなのです。
はじめて盛るお料理は、
揚げ茄子の煮浸し、と決めていました。
油で揚げたつやつやのお茄子を
冷たいお出汁につけていただく夏のごちそう。
「いいねえ、いいねえ」
箸をのばす家族の笑顔が 嬉しい夕食。
季節のお総菜をたっぷりと盛り
いつも食卓の真ん中に、
家族の真ん中に
置いておきたい器です。
■melody's melody■
調べを奏ではじめたといえば
なんといっても 娘、1才9ヶ月。
まさに この夏
驚くべき勢いでおしゃべりをはじめました。
日々、その成長には目を見張るほどで
夏のはじめは、単語の羅列だったものが
今ではほとんどのことを文章で伝えてくるように。
彼女とのつきあいも
いよいよ新しい展開が始まったという感じですが
“会話”しているという状況がなんとなく不思議で、
なかなか慣れない私です。
「言葉と姿勢のきれいな人に。」
娘にそう願うなら、まずは自分から。
これがなかなか難しいのですが。
■夏の終わりの、夏模様■
お盆も過ぎて、ようやく夏日和到来。
海に行きました。
気持ちのよい潮風を受けながら
波の調べに身をまかせるひととき。
ふと目を上げると
穏やかな太平洋を背に
妹と娘のシルエットが やさしい。
遙かなる水平線に
時折、大きな白い客船がぼんやり現れては、消え
幻想的でさえあります。
束の間な夏時間を
惜しむように楽しんだ夏の終わりの一日。
■You can't just lie there!■
とびきりの海を見た勢いで、
なつかしい一冊がまた、読んでみたくなりました。
描かれた海の美しさ。
その表現の楽しさ、イメージの広がり。
たとえば He saw a medusa made of rainbow jelly・・・
たとえば a forest of seaweeds growing from sugar-candy rocks・・・
たとえば and sea anemones, who looked like pink palm tree swaying in
the wind。
それほどに魅力的な海の中だというのに、
大きな魚を恐れるがあまり
泳ぎ回ることもせず隠れて暮らす子魚達。
彼らに向かって スイミーは言うのです。
「But you can't just lie there.」
そして、
「We must THINK of something.」
Swimmy thought and thought and thought.
夏の調べの余韻を
もうしばらく楽しみたいので
一枚の絵としても素晴らしいこの表紙を
本棚にたてかけています。
「You can't just lie there」
私自身の中でこそ いつも聞こえているこの声に
素直に耳を傾けなければ、と思いながら。
傍らのまつぼっくりは
海岸の松林で娘がひろった夏の思い出。
(2003.8.23)