ha
Wild Strawberry Tea
(Fortnum&Mason)
 


 

フォートナム&メイソンの野いちごのお茶は
フレッシュで豊かな香りが
Sweetsにひけをとらないほど、スウィート!
飲んでみると さっぱりしていて、
味に不自然な甘みやえぐみもありません。
フレーバーティーをほとんど飲むことのない私が
今、夢中になっているお茶のひとつです。
初めて渡英したのが、この季節ということもあり
6月から7月にかけては 私の中で一番英国熱が高まる時期。
お茶を飲みながら考えるのも 英国のことが多くなり・・・
 

暗い客席の後ろで
客入れテープを聴きながら
私は まだ見ぬ英国のことをぼんやり考えていました。
客入れテープとは、開場して 舞台の幕が上がるまでの間、
ホールに流しておく音楽のテープのことです。
当時参加していた舞台で音響担当だった私は
初めての渡英を間近に控えていながらも
連日 公演準備におおわらわ。
数日後に自分が英国の地に立つことなど
まるで現実感のない遠い世界のことようで、
ただただぼんやりと英国に思いを馳せるだけなのでした。

そして数日後。
汗だくでテープ操作をした蒸し暑い学生会館など、
まるで現実感のない遠い世界のことのように
私はケンブリッジはニューナムカレッジを歩いていました。
はじめての英国。
幸運にも留学奨学生としての渡英でした。
選考試験に受かり
アメリカかイギリスの好きな方で一夏を過ごす機会を与えられた時
実は 確固としてイギリス!を選択したわけではありません。
英文科にはいましたが、
英語そのものが好きだというだけで、アメリカが嫌いなわけでも
特別イギリスだけに思い入れがあったわけではなかったのです。
ただ ちょうどその頃、
父からもらったマザーグースの本が面白かったため、
その本で出会ったケイト・グリーナウェイという画家が気に入ったため
なんとなく、イギリスを選んだ、
ほんのそれだけのことだったのです。

ところが、
自分が好きだったものの多くは、
この国と関わっていたことを
私はそのひと月で知ることになるのでした。
マザーグースの本で出会った世界は
むかし、むかしの挿絵ではないこと。
漠然と憧れていた風景や空気が
今も この国の緑の中にあること。
「小さな頃から胸にためてきた沢山のものと
こんな遠くの北国で再会しちゃった・・・」
それは静かな興奮でした。
そしてその夏こそが、
今の私につながる全てのはじまりだったのです。
「絶対またここへ戻ってこよう」
ケンブリッジを去る日に
自分宛の絵はがきにそう記した通り、
私はその後も焦がれるように、懐かしむように、
イギリスの風景を追いかけることになるのでした。

Journeyの‘Open Arms’は
客入れテープに入っていた曲のひとつ。
懐かしいメロディーを聴きながら
あの夏が蘇ってきます。
思い出も感動も、そして憧れもまだまだ色あせないまま。
イギリスという‘気持ちの還る場所’を目指す
私のJourneyも まだまだ続きそうです。
 

(2002.6.27)

FRONT
PUB  KITCHEN GALLERY WINTERTIME GARAGE