Blue willow のある食卓
ーEveryday with Bluewillowーー
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雪の日のサブレ 目覚めると、銀世界だった。 予定はキャンセルになり、 子供達はおもてに飛び出して行った。 私は一人、台所でサブレを焼く。 生地を冷蔵庫で休ませて、 予定で埋まった台所のカレンダーを眺める。 説明会だの、制服採寸だの、物品購入だの、 子供達の新生活に関する準備に忙しいのが有り難い。 仕事が繁忙期なこと、 来月に控えた二つのスプリングコンサートの準備に追われていることにも 助けられている。 油断すると、寂しさ、のようなものがひたひたと押し寄せてくるから 目の前にどんどこどんどこ、やるべきことがある方がいいのだ。 あの年も、雪を見ながらそんなことを考えていたなあ。 相も変わらずな私。 そして、相も変わらず 少し気の張る外出のある冬の日には なにかしら焼き菓子を作っている。 その時々に、その一皿ごとに 記しておきたい思いがあったり、なかったり。 ほとんどは日常に埋もれていってしまうけれど 共通しているのは、 焼き上がったそれらは どれもウィロウで供されるということだ。 写真にも撮らない。 ここに残ることもない。 ただ、家族のお腹と記憶の中に積もって、 いつしか消えていく。 everyday with blue willow オーブンからサブレの焼ける甘い香りが漂ってきても まだ雪は降り続いていた。 さて、翌日、街を走ると、 あちらこちらに、雪だるま。 みんな本当に嬉しかったんだなあ! なにしろ、この地では20年ぶりの積雪だったとか。 新聞の地方欄のトップニュースのタイトルも 「晴れの国が雪国に」なのでした。 (2014.2.10) |
2014年、初読書は、「檸檬」だった。 きっかけは、友達からの年賀状。 家族の日常スナップが印刷してあり 本を読んでいる少年の写真が載っていたのだ。 その本が、「檸檬」だった。 確か文庫本があったはず・・・ 久しぶりに読みたくなって 本棚の奥から発掘してきた。 一体私はあの檸檬が好きだ。* お正月休み、 ごろり、炬燵に横になってページを繰った。 それにしても心という奴は何という不可思議な奴だろう。* 「檸檬」を読んだから、というわけでないけれど、 年明け早々、レモンケーキを焼いた。 一体、私はあのレモンケーキというものが好きだ。 洋菓子屋の隅につつましく置かれているものも、 スーパーマーケットのパン売り場に 無造作に積み上げられているのも。 主役級の華やかさはない。 その味と佇まいは、今や懐かしささえ帯びている。 でも、好きなのだ。 長じてケーキのレモン型というものまで、買ってしまったほどだ。 ころんとしたレモン型で焼いて 片面をホワイトチョコレートでコーティングした。 元旦から数日、気持ちのよい冬晴れが広がる 穏やかな年始だった。 年賀状を仕舞う箱を整理していて、 窓の外と同じような、きっぱりと澄んだ青空に目が留まる。 随分前の年賀状だ。 あえかな空色。 端正にととのえられた後楽園の緑。 冬木立のおとす影。 この清々しさが新年にふさわしい気がして、 2008年の年賀状に使ったのだった。 少し色褪せてしまった感はあるけれど あの空気感はまだ、残っている。 お気に入りのヘリンボーンのコートを着ている娘は 当時まだ、幼稚園児だった。 そんな彼女も春には中学校に入学する。 そして、息子が幼稚園に。 今年は、節目の年になるなあ・・・ そういえば、4年前、 息子が生まれた時、入院先の病院に娘が持ってきてくれたのも レモンケーキだった。 「まま、すきでしょ?」 そんな手紙が添えられていた。 いつもBLUE WILLOW JOURNALをお読みくださり ありがとうございます! 今年もウィロウとの日々を楽しく綴っていきたいと思いますので どうぞよろしくお願いいたします。 また、トップページでもお知らせしていますが 春にサーバーを移転します。 3月いっぱいはこちらでも見て頂けますが それ以降は、完全に移転しますので どうぞよろしくお願いいたします。 *「檸檬」 梶井基次郎(新潮文庫) (2014.1.12) |