Blue willow のある食卓
ーEveryday with Bluewillowーー
日曜の午後、妹がやってきた。 本来なら県外に暮らす妹が、隣町に転勤になって3年目。 こんな機会はもう巡ってこないだろうから、 予定を合わせては、買物にでかけたり、互いの住まいを行き来したり、 期間限定の貴重な時間を楽しんでいる。 でも、それもあとそう長くはない。 次のクリスマスが巡ってくる頃には もう彼女はここにはいないことが決まっている。 珈琲を入れて、おしゃべり。 妹は1枚のCDを持ってきてくれた。 来月行われるライブのバンドの音楽で 私の為に、彼女が編んでくれた。 「最重要 これだけは押さえておこう!」なんて書き添えてある。 受験問題集じゃあるまいし。 妹からライブの誘いを受けたときは、迷いもなく断った。 そのバンドの音楽を私はほとんど聴いたことがなかったし、 やはり、そういう場所には本当に好きな人が行くべきだと思ったからだ。 それでも、彼女は懲りずに誘ってくれた。 生の演奏、生の歌は、絶対いいよ。 一緒にいくだけでも、きっと楽しいよ。 ・・・そうだよね。 そして、私は思いだしたのだった。 あの時、彼女は私と一緒に来てくれたっけ。 かつて、ピアノの道を志し、何時間も鍵盤にむかっていた妹は
今も、激務の中、部屋に電子ピアノを置いて弾いている。 そんな彼女が誘ってくれたのは、 「長年、日本のロックシーンをひっぱってきた」と形容される ロックバンドのライブだ。 CDでしっかり予習するよう釘をさされ、 「お姉ちゃん、失神しないか心配だけど」 そう残して、彼女はまっ赤な車で風のようにびゅーんと帰っていった。 (2015.12.20)
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カレンダーを受け取りに「丸善」へ行き、 郵便局でようやく年賀状を買う。 ホームセンターでは、ほうきと玉子焼き器を買い替え、 こんな寒くて慌ただしい日には、と鍋の材料も買っておく・・・のあたりで 午前の部、終了。 午後は、重なってしまった子供達の面談を手分けして 幼稚園は私、中学校は万蔵氏。 西へ東へ、あっちこっち。 車も、気持ちも走らせた、師走の一日。 朝一番にパン屋さんに寄っておいてよかった。 日もおちる頃,ようやく一息ついて シュトーレンの包みをほどく。 ほろほろと粉砂糖をこぼしながら 最後の1枚になった壁のカレンダーに 12枚分の日々を想う。 西へ東へ、ずっと、走っていたような。 買ってきたカレンダーは、来年もまた、筆跡カレ ンダー。 新しい12ヶ月は、アンデルセンと一緒に また、走っていくのだろう。 (2015.12.16) |
「小野寺の弟、小野寺の姉」 きっとこんな映画なんだろうな・・・ 観る前から、なんとなく想像できてしまう。 そして、予想通りの展開。 にもかかわらず、 作品をこんなにも魅力的にしているのは、 弟と姉、 それぞれのチャーミングな存在に他なりません。 「小野寺の弟 小野寺の姉」は 両親を早くに亡くした、小野寺家の弟と姉の物語。 調香師の弟と、眼鏡屋で働く姉を 向井理さんと片桐はいりさんが 細やかな演技で魅せてくれます。 なんといっても、二人のかけあいが絶妙。 唯一無二。 まごうことなき「最強の二人」っぷりなのです。 何度も登場する台所のシーンが印象的。
弟と姉、 それぞれが、それぞれの形で互いを思いやりますが なかなか上手くは伝わりません。 きゅっと前掛けの紐を結んで ちゃちゃっと料理をする姉は いつだって、ちょっぴり暴走気味。 そんな姉を、時にかわし、時に受け止める弟。 ‘大切なものをつい貼ってしまう冷蔵庫’が 野菜を切ったり、かつぶしを削ったりする二人を 見守っています。 ぶっきらぼうで、不器用で。 涙と笑いで閉じられる ラストシーンは、とりわけ好き。 仕事で、「ありがとうの香り」などというものを 調香しなくてはならなくなった弟。 そんな難題の答えを探し続ける彼が とうとう、それを見つけ出す・・・ いや、それに気がつくラストシーンの舞台もまた、 台所なのです。 私の台所にも、冬の陽射し。
寒くなって、大根が美味しくなってきました。 今日は豚バラ肉と合わせて炊こう。 ぴりっととうがらしをきかせると 冬時間の至福、ここにあり! 映画の最初と最後に登場する、とうがらし。 小野寺家の冬の食卓にも きっとこんな一品が上るに違いありません。 台所と同じくらい好きなのは 二人が自転車に乗っているシーン。 物語も秋から冬へ、 ペダルを漕ぐ二人とともに季節は巡ります。 一度目より二度目、二度目より三度目・・・ 観る度に、好きになる。 そして、観終わるといつも、 「ありがとうの香り」を胸いっぱい吸い込んだような あたたかな気持ちになる作品です。
(2015.11.30) |