冬時間
夏時間
*再会*
出会ったのは、18年前。
その後、会うのは
今回で3回目。
友達というにはおこがましい気もするけれど
知り合いというほど遠くもない。
会うのは3回目とはいっても
18年前、成田空港での「はじめまして」のその日から、
一週間のイギリスの旅を共にした方なのだから。
こうして出会ったIさんが
7月の昼下がり、
遊びに来てくださった。
ほぼ私の母親世代。
それなのに、あれもこれもと話が尽きないのは
18年前と変わらない。
バース駅のスタンドで、B&Bの朝食室で、帰国後の新幹線でも
娘のような私の話を
優しく受け止めてくださったっけ。
ただただ、自分の前しか見えていなかった学生の私は
随分と無知で、幼かったに違いない。
ハタチそこらでワーズワースの何を語ったというのだろう。
飛行機の中でワーズワースのことを熱く話した自分を
すっぱい気持ちで思い出す。
「あの時の文章が背中を押してくれたのね。」
エッセイコンテスト後、じっくり着々と
自分の世界を広げていらっしゃるIさんが
静かにそうおっしゃる。
ええ、きっとそれぞれに・・・
英国への恋文が繋いでくれたこのご縁。
今日のおしぼり、さりげなく原稿用紙の柄にしておいたの
気付いてくださったかな。
*きらきら*
「私、ゼリーの中に閉じ込められているみたい!」
*渡る風*
緑の野をさあっと風が吹き抜ける。
ひと月以上も
クーラーの冷気の中で暮らしてきて
弱りきっていた体中の細胞が
ひとつひとつ目覚めるような心地よさ。
深呼吸をして
ただ風に身を任せるその瞬間
ひととき、夏を好きになる。
*ぼくの夏*
ぼくにはじめての歯がはえた。
ある朝、お茶を飲ませてくれていたおねえちゃんが
カチカチ音がするのはなんだろう?って気づいてくれたの。
ぼくの歯が、コップにあたって小さな音をたてていたってわけ。
おねえちゃんはとても喜んで
でかける前のわずかな時間に
「歯が生えておめでとうカード」をつくってくれたよ。
カードには、
ちっちゃくてかわいい歯を大切にしてね、って
書いてあった。
二人で歯磨きしている絵も添えてあるんだ。
SとKって、お互いのイニシアルのはいったカップもだよ。
ぼくはこの夏で、ひとりでおすわりしたり、
ハイハイで進んだりできるようになった。
ママは「目が離せなくなって、大変」なんて言ってるけど
ぼくは、もっともっといろんなことがしてみたくてたまらない。
あちこちでかけてみたくてたまらない。
テーブルに並ぶおいしそうなものも
もりもり食べてみたいんだ。
そのためにも、歯は大切にしなくちゃいけないんだね。
はやく、おねえちゃんみたいになりたいな。
(2010.08.05)